三味線を習うメリットとは
つい先日、「三味線を習うことのメリットは何ですか?」と質問されたことがありましたので、ちょっとそんなことについて考えてみました。
■日本の伝統文化理解への切り口になる
英語を使って様々な国の人々とコミュニケーションを行うとき、英語力よりもはるかに重要なのが、「教養」と「日本人としてのトピック」です。
後者の「日本人としてのトピック」については、特に日本を訪れる留学生や外国人ビジネスマンが、親密になると必ずこの内容をいろいろ尋ねてきます。
「歌舞伎が見たい、和楽器をやってみたい…などなど」
ではやみくもに、日本の伝統芸能を全て体験しないといけないか、というとそうではありません。
乱暴な言い方ですが、予備知識や精通するものなしに、伝統的な日本の音楽を聴くと、どれも同じに聞こえてしまいます。
しかし1つでも伝統的な芸能に深く関わってみますと、その比較と関連から他の様々な伝統芸能について理解できるようになります。
例えば、長唄の三味線を一通りやりますと、
・まず、他の三味線(津軽、義太夫、地歌、端歌、民謡など)との音色や音楽の違いが分かってきます。
・歌舞伎・日本舞踊の伴奏は主に長唄なので、知っている曲が演奏されていれば、歌舞伎の演目や、踊りの表現内容への理解が深まります。
・長唄の曲には、能・狂言を典拠とするものも多く、知っている長唄に対応する演目を観れば、難解そうな能も興味深く観ることができます。
■基本的な礼儀作法が身につく
三味線に限らず、伝統的な日本の稽古事に通じることですが、「礼に始まり礼に終わる」といわれるように、礼儀作法は非常に重視されます。
贈り物の仕方や、初対面の方とのご挨拶、お礼の仕方など、ビジネスマナーにも通じる様々な作法を、普段の稽古の中で、姉弟子や兄弟子のやり方に習うことで自然に身につけることができます。
■リズム感と音感
上の2つは、三味線に限ったことではありませんので、3つめは三味線特有のもの挙げてみます。
三味線は胴が太鼓状になっており、これを撥でリズミカルに叩いて演奏します。
左手指で音程を作るわけですが、「音痴な三味線」以上に、「リズム感の無い三味線」というのは、聴いていて苦しいものがあります。(三味線の音というのは、笛や尺八のように長く伸びる音ではないので、リズムが重要になります)
三味線という楽器は、さまざまな唄の伴奏として手軽に用いられてきた歴史があります。唄の伴奏として演奏するとき、旋律を奏でるのと同時に、打楽器としての役割の両方を担って来たのがこの三味線です。
また、三味線の糸は大変伸びやすいため、事前にどんなに完璧なチューニングしても、演奏中の微調整が必要になります。さらに、棹にフレットが無いため、左手指で正確に棹のポジションを押さえて、演奏しなければなりません。
三味線を日常的に弾いていると、音程に対する感覚がだんだんと鋭くなってくるようです。
長くなりすぎましたのでこの辺で。
hozumi